が、昇は一向平気なもの、なかなかそんな甘手ではいかん。圧制家《デスポト》、利己論者《イゴイスト》と口では呪《のろ》いながら、お勢もついその不届者と親しんで、玩《もてあそ》ばれると知りつつ、玩ばれ、調戯《なぶ》られると知りつつ、調戯《なぶ》られている。けれど、そうはいうものの、戯《ふざ》けるも満更でも無いと見えて、偶々《たまたま》昇が、お勢の望む通り、真面目にしていれば、さてどうも物足りぬ様子で、此方《こちら》から、遠方から、危うがりながら、ちょッかいを出してみる。相手にならねば、甚《はなはだ》機嫌がわるい※[#白ゴマ点、200−17]から、余義なくその手を押さえそうにすれば、忽《たちま》ちきゃッきゃッと軽忽《きょうこつ》な声を発し、高く笑い、遠方へ迯《に》げ、例の睚《まぶち》の裏を返して、ベベベーという。総《すべ》てなぶられても厭《いや》だが、なぶられぬも厭、どうしましょう、といいたそうな様子。
母親は見ぬ風《ふり》をして見落しなく見ておくから、歯癢《はが》ゆくてたまらん。老功の者の眼から観れば、年若の者のする事は、総てしだらなく、手緩《てぬ》るくて更に埒《らち》が明かん。そこで耐《
前へ
次へ
全294ページ中263ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング