べる。
 Oは他所で泊らなくなつた。
 Oは絶えず妻に不平を云つた。
 Oは河原に対して冷たくなつた。
 私に対するOの冷淡な態度。
 そつけない手紙。
 妻は私の帰宅を喜ばなかつた。

 私の留守中妻は一層Oと親しくなつた。……それが私をいやな気持にさせた。
 (一)絶えずOのことを思ひ出す。
 (二)豆の話。
 五月二十三日(三)妻は二時間許りOのところにゐた。私に対する妻の冷淡な態度。
 (四)妻は引越しを早くするやうに勧めた。
 (五)私の引越しの前日、妻は又も長坐した。
  (私と)妻との対話。
 私の引越しの日妻は家にゐなかつた。
 Oに対する妻のぞんざいな態度。
 (六)妻との相談、妻の返答。
 (七)妻との親密な交渉を断たうといふ私の決意。
 七月一日、妻は母のことばかりこぼして、Oはまるでそれに関係がないやうな調子だ。妻は一人Oの肩を持つて、その滞在を重荷だと感じない。

   最近
 Oのことで妻は一度も不平を云はない。
 大体、妻はOの滞在を重荷に感ずる風を見せない。



底本:「日本の名随筆 別巻77 嫉妬」作品社
   1997(平成9)年7月25日第1刷発行
底本の親本:「二葉亭四迷全集 第八巻」岩波書店
   1965(昭和40)年4月
入力:浦山敦子
校正:noriko saito
2008年6月4日作成
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