ハれて家を出るところに、
「ほんたうにまあ、私はあなたがたから殘酷な目にあつてゐました! あなたがたみんな、――卑怯な! 私はいつも貰ふことばかりで、――ついぞあげることがない。あなたがたの中にまじつた物貰ひのやうでした。私のところへきて犧牲を出せとお求めなすつたことは一度もない。私は何をすることも出來ないものになつてゐました。私はあなたがたがいやになりました! あなたがたが憎くなりました!」
 といふのはノラが「あなたには少しも私といふものを理解してゐらつしやらなかつたでせう? 私は今まで大變不法な取扱を受けてをりました、第一は父からですし、その次はあなたからですよ」といふのと同じである。またゼルマが
「どんなにか私はあなたがたの苦勞や心配をたゞ一滴でもいゝからわけて貰ひたいと思つたでせう! けれどもそれを私が頼むと、あなたは笑つておしまひなさる。私を人形のやうにくるみ上げて、子供と遊ぶやうに私とお遊びなすつた。あゝ、私どんなにかあなたと苦勞を一緒にしたいと騷いだでせう! どんなにかこの世の廣い、高い、強いこともしたいと、一生懸命念がけたでせう!(下略)」
 といふのはノラが「私はあ
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