まいとした。
「みんな風呂へいったのでしょう」
「菊龍と富江はまだ帰らないのかえ」
「まだでしょう」
「そう。お前さん達もお湯へつかっておいでな。ゆっくり暖まってさえおけば身体がつづくものだからね――小妻さん、お前身体の工合はどうかね」
「え、ありがとう」
「あんまりよくないようなら飯田さんへかかさず通ってすっきりさせないといけないよ、え」
「え、ありがとう」
 冬子がそこへはいって来た。
「お、冬子さん、お前さんまだお湯へ行かないのかね」
「ええ」
「そして、あの何はどうしているの」お光のことを言うらしかった。
「大河の小母さんは離室に休んでいらっしゃいます」
「御飯は」
「朝飯はすましていらしたのでしょう」
「それはそうだろうね、ここの朝は街の午《ひる》だものね、おほほほほ」
 女将は茶の間の横座に坐って、昨夜の客の台帳などを一通り調べはじめた。そして思い出したように「米子、市子」と呼んだ。二人の少女は白粉のはげかかった顎をなでながら「何ですか」と出て来た。
「もう踊りのお師匠さんのところへいっておいで」
「はい」
「そして、お師匠さんに夕方お閑になったらお遊びにおいでと言うのです
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