ら、ああ、わたしはやっぱり地獄にいるのだっけと思いました」
冬子はその時ふとお光はどうしているだろうと思った。大概部屋は片付いてはいるが、一人で淋しがっているに違いない。何んだか起きて顔がみたいと思った。冬子は起きて普段着に着かえて、小妻に「わたし、ちょいと用のあるのを忘れていましたの――もっとゆっくりやすんでいらっしゃいな」と言って、店の間を出てしまった。小妻と話すことは冬子にとっては、常に努力をもって征服し統一している自分の性格の弱い一面をまざ/\と見せつけられるようで堪えられなかったせいでもある。
冬子の去ったのを寂しく思いながら、小妻はお幸、時子、茂子、米子と市子、鶴子と眺めつつ、富江と菊龍のいないのにある堪らない本能的な悲哀を感じずにいられなかった。二人とも昨夜はある料理屋に呼ばれて行ったのだが、恐らくはどこかで泊ったものだろう。
二人とも丁度今の米子と市子のように幼い頃から春風楼に育てられて昨年ようやく一人前になったばかりのまだ十八の、普通なら生《うぶ》な娘の年頃であった。小妻は自分があの紙問屋の息子に恋したのは、丁度菊龍や富江の年頃だったのを思って深い悲しみを感じず
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