ているかを静かに語りきかせた。また、そうした娼家に住むといっても女達と一緒にいるわけでなく、また自分さえ勉強に一心であるなら、どこに住むも同じであるとも言ってきかした。平一郎は母の言葉をききながらも、言葉をとおして迫る「貧」の圧迫と痛さに堪えられなかった。しかし、ああ、彼に恵まれている彼自身の力は「娼家の軒」に日を送ろうと悲しくも決心させた。
(自分は和歌子にも深井にもその通り打ち明けよう。自分が貧乏でしかたなく替ったことを、どんなところに住もうと、この自分の精神は旺盛で健全で、かわらないことを、そして、自分は君達を愛し君達も自分を愛してくれることを!)
「冬子さん、何とした縁でしょう。ほんとに何とした不思議な縁でしょう」とお光は平一郎もどうにか承諾していよ/\相談が双方にまとまったとき、彼女の平常に似ず、涙ぐんだ感激で冬子に言った。
「小母さん、わたしこそですわ。もしも小母さんがいらっしゃらなかったら、わたしはどうなっていたでしょう。きっと今よりもずっとずっと悪いわたしになっていたに相違ありませんわ――今のままだってわたし小母さんにしょっちゅうすまない気がしていますのよ」と冬子は言っ
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