といえば随分短いようで、しかも平一郎母子には長い、変移の多い時日である。彼は冬子に会うのが恥かしいような切なさを感じた。お光はお光で苦しい独り子のための生活を振り返ってみた。冬子が去ってしまってから日々の生活に追われながら一日も忘れたことのないあの彼女一人の胸に秘めている「埋れた過去」の運命の秘密が、新しい苦痛と恐ろしさを持って甦って来た。(何という不幸な自分達だろう。)それにしても冬子に会えることは母子にとって悦びであった。
「一人で来るのかしら。え、母さん」
「いいえ」お光はためらって、「先方の、天野の旦那様のお供をして来るですってね」
「そうですか。それじゃつまらない」
(和歌子が東京へ嫁入った、そして今、冬子がやってくる。)平一郎は訳もなくそういうことを考えて、自分の行きづまった生気のない幽鬱な現在の生活を二人の前に羞じずにはいられない気がした。ああ、ほんとに、この同じ地上には和歌子もいれば冬子もいるのだ。どうして自分は立派な人間にならないでおこうか。彼には今のままで学校へ行くことが本能的に苦痛になって来ている。彼は自分はどうしたらよいのだろうと考えた。世界が暗くなって感じられ
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