という男の濁った返事がした。
「僕です、深井です」
「深井君か※[#疑問符感嘆符、1−8−77] はいりたまえ! 今、社(新聞社)の方から帰って寝転がったところだ。はいりたまえ!」
ぱっと二階に電燈が点《とも》された。窓硝子に真っ赤なカーテンが燃えるような真紅の色を染め出した。二人は横手の戸を開けて、暗い上り口の板張りから、すぐに二階へあがった。天井の低い薄汚ない二間を障子をはずしてぶっとおしてある。奥の方に机、書棚、火鉢、壁際に小さい西洋風の木の寝台、窓の真紅なカーテンに照りかえす電燈の赤光を浴びて、背の低い、額の広い、眼球が見えないくらい窪んだ眼、やせた頬、――の二十四、五の青年が厚ぼったい筒袖の綿入を着て坐っていた。
「今晩は」深井はその男の間近に坐った。平一郎は立って頭を下げた。
「だあれ?」その男は深井にたずねた。
「僕の親友の大河です。あなたに会ってみたいというので――」
「あ、そうですか。僕は尾沢です。つまらない奴です。どうぞこちらへ」
「ありがとう」平一郎は未だこういう風な青年に遭ったことがないので、暗い引き入れるような特有の感じを持つ青年をどう判断し、どう態度をきめ
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