第七章




 停学の期間が過ぎても平一郎は学校へ行くのは厭だと言い張った。平一郎の停学の理由を半日近くも学校で聞かされて来た母のお光は平一郎に小言一つ言わなかった。彼女はただ深い溜息をついた。
「他所《よそ》のお嬢さまに手紙を差し上げるなんて、お前大それたことですぞえ」
 こう言ったきりだったが、平一郎が学校へ行くのは嫌だと言うのを黙していられなかった。これまで仕上げて来た独り子である。彼女はしまいには「頼む」とさえ言った。平一郎もわけなしに湧く嫌悪の情を克服して、仕方なしに毎日学校へ通った。毎朝彼は眼がさめるときまって、「ああ、今日も学校へ行かなくてはならないのかなあ」としみじみ生きていることに苦痛を感じた。十一月の下旬にはもうこの北国の街に水気の多い霰《あられ》が一斉に降っていた。
 どうした訳かその頃から平一郎は和歌子の姿を見ることが出来なくなった。学校へ行く朝の路上でのあの幸福な栄光に充ちた遭遇は彼から奪われてしまった。彼は深井に尋ねたが、深井も知らなかった。深井の家を訪ねてもみたが、かつて見出した垣根越しの隣家の庭に和歌子の姿を見ることはなかった。
「隠したのか
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