「しかし何でしょう、運動会は毎年いつでも出来ることではあり、珍しくもないことですから、生徒の成績品を烈べて父兄に観覧させるということはいいことですな」
 頸の長い、たるんだ黄色い皮膚を突っぱった、喉骨の一寸もある、眼鏡をかけた、始終白いハンケチをもっていて、何か言うときにはそのハンケチを相手の眼先でふりまわす癖のある英語の教師が、少し禿げかかった体操の教師の頭を顎の下に見下して、右手でハンケチを振り廻わして言った。
「父兄ばかりでなく生徒にとってもいいでしょうな」
「しかし運動会に越したことはありませんです」
「さあ、それは無論運動会に越したことはないのです。しかし今年はいろ/\経費の都合が許されなくなって来ているという校長さんの、あ――」
 そして英語の教師はハンケチを振り廻わした。彼は自分がハンケチを振り廻わしていることを知らなかった。家に帰ると彼は細君にいつも新しいハンケチを一日で役立たずにするといって叱られた。彼はどうして一日のうちにハンケチが垢づくのか分らなかった。彼は太息をついて細君に更に新しいハンケチを求めねばならなかった。そのたびに彼は月給が五十三円で、子供が六人の八人
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