れた御大葬の式の御亡骸《おんなきがら》を遥かに見送り奉るため、一般市民は公園の広場に集まるのであった。平一郎は寂しくなっていた。去った冬子のことや、自分の運命の貧しさのことや、また和歌子のことや、遂には死ななくてはならない自分達であることやを考えて、誰一人高声で話すものもなしに街上を一杯に溢れて歩いて行く群衆の中に交って歩いて行った。大砲の音はどおん、どおんと響いた。彼が自分の家に近いS川の大橋近くへ来たとき、彼は橋詰に佇んでいる一人の女学校の生徒を見出した。髪の結い方や、少し腰を折って佇んでいる姿が和歌子に相違なかった。彼は嬉しくてならなかった。本当にこうした、死の厳粛と森厳と恐ろしさに充ちた夜に、愛する和歌子に会うことは何というすばらしい生甲斐、歓喜であろう。
「和歌子さん!」
「あらっ! 平一郎さん! わたしね、きっといらっしゃると思って待っていたのよ」
「ありがとう――河べりに沿ってS橋の方から行こう」
「ええ」
二人は橋詰から、枝垂れ柳の生えた川岸を、流れに沿って下りかけた。誰も通るものはなかった。水流が黒藍のうねりを光らせつつ十五の平一郎と十六の和歌子の歩みを流れて行った
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