見たときの嬉しさはお光に一生忘られないものの一つであった。
「兄さん、俊太郎さんの船が見えましてよ」
「おう。そうらしいね」兄もさすがに嬉しそうに立ち上がった。兄の唯一の親友であり、兄との内面的交渉の深い、常に兄を光明的に力づけている俊太郎であることを知っているお光は、そうした場合兄以上に嬉しかった。ああ、漫々たる大海原を白鳥のように乗り切って来る愛すべき奴よ! 船首に翻る真赤な旗の間から船頭の逞しい裸体の動作が見え、やがて船首が海岸の方へ真正面に向き変った。お光達には腕を拱《こま》ぬいて立っている大河俊太郎の姿がはっきり見えた。兄はたまらないように「おうい」と叫んだ。
「おうい!」弾力のある俊太郎の声が海の微風に送られて響いて来た。
やがて船の進行が止まって新しい錨がぎらり青い光を閃かして海に投げ入れられた。海は新しい船を軽々と白鳥のように浮べたままゆらりゆらり波をうねらせていた。海上に下された一艘の伝馬が俊太郎を乗せて近づいて来た。
「よう、ありがとう」
「おう」と俊太郎と容一郎の手を握り合った瞬間、容一郎の眼には涙がにじみ出ていた。
「わざ/\すまなかった。お光さんも来て下さっ
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