うな倦怠と痛みを覚えて、無意識な昏迷に引きずり入れられようとする。白光はうつむきがちな彼女の頸のきめの粗いざら/\した白粉膚に紫光を放って反映した。
「菊ちゃん、居眠りなんかして不景気じゃなくって!」
「はあっ?」菊龍は顔をあげて、
「まだ九時すぎだわ」と言った。
「なんだか今夜は暇じゃないの」
「だって、まだ時間も早いんだわ」
「さっきはほんとに馬鹿馬鹿しかった。ほんとうに」
「だって、時ちゃんはまだいいわ。わたしはまだ何処からも言って来やしないわ」
「菊ちゃんはこの間から嫌という程招ばれたからいいじゃないの」
「ま、またあんな悪いことを言うのよ」
菊龍は眠気で動かない顔面の筋肉を不器用にゆがめて笑った。それを見て情けない、嫌あな顔をするのは茂子だった。彼女はうつむいて、小さな莨盆の小さな赤い火をみつめていた。(こうした夜、こうして閑であることは、ああ何というかけがえのない恵みであろう!)彼女にとっては客席に出て男に接することは苦痛である。その苦痛を堪え忍ばねば生きてゆけない彼女である。彼女には夜は呪わしいものであった。(昼とても彼女には悦びをもたらしはしなかったが。)彼女は輝いた
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