》を糧《かて》にする道徳家《だうとくか》が二十五銭の指環《ゆびわ》を奮発《ふんぱつ》しての「ヱンゲージメント」、綾羅《りようら》錦繍《きんしゆう》の姫様《ひいさま》が玄関番《げんくわんばん》の筆助君《ふですけくん》にやいの[#「やいの」に傍点]/\を極《き》め込《こ》んだ果《はて》の「ヱロープメント」、皆之《みなこ》れ小説《せうせつ》の功徳《くどく》なりといふ。よしや一|斗《と》の「モルヒ子」に死《し》なぬ例《ためし》ありとも月夜《つきよ》に釜《かま》を抜《ぬ》かれぬ工風《くふう》を廻《めぐ》らし得《う》べしとも、当世《たうせい》小説《せうせつ》の功徳《くどく》を授《さづ》かり少《すこ》しも其|利益《りやく》を蒙《かうむ》らぬ事|曾《かつ》て有《あ》るべしや。
冒険譚《ばうけんだん》の行《おこな》はれし十八|世紀《せいき》には航海《かうかい》の好奇心《かうきしん》を焔《もや》し、京伝《きやうでん》の洒落本《しやれぼん》流行《りうかう》せし時《とき》は勘当帳《かんだうちやう》の紙数《しすう》増加《ぞうか》せしとかや。抑も辻行灯《つじあんどう》廃《すた》れて電気灯《でんきとう》の光明《くわ
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