めの世《よ》の中《なか》ぞかし。
斯《かゝ》る中《なか》にも社会《しやくわい》に大勢力《だいせいりよく》を有《いう》する文学者《ぶんがくしや》どのは平気《へいき》の平三《へいざ》で行詰《ゆきづま》りし世《よ》を屁《へ》とも思《おも》はず。春《はる》うら/\蝶《てふ》と共《とも》に遊《あそ》ぶや花《はな》の芳野山《よしのやま》に玉《たま》の巵《さかづき》を飛《と》ばし、秋《あき》は月《つき》てら/\と漂《たゞよ》へる潮《うしほ》を観《み》て絵島《ゑのしま》の松《まつ》に猿《さる》なきを怨《うら》み、厳冬《げんとう》には炬燵《こたつ》を奢《おごり》の高櫓《たかやぐら》と閉籠《とぢこも》り、盛夏《せいか》には蚊帳《かや》を栄耀《えいえう》の陣小屋《ぢんごや》として、米《こめ》は俵《たはら》より涌《わ》き銭《ぜに》は蟇口《がまぐち》より出《いづ》る結構《けつこう》な世《よ》の中《なか》に何《なに》が不足《ふそく》で行倒《ゆきだふ》れの茶番《ちやばん》狂言《きやうげん》する事かとノンキ[#「ノンキ」に傍点]に太平楽《たいへいらく》云ふて、自作《じさく》の小説《せうせつ》が何十遍《なんじつぺん》摺
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