養われたる民族が、遂に世界に優越せるも決して偶然でないように思われる、欧洲の今日あるはと云わば、人は必ず政体を云々し宗教を云々し学問を云々す、然れども思うに是根本問題にはあらず、家庭的美風は[#「家庭的美風は」に傍点]、人というものの肉体上精神上[#「人というものの肉体上精神上」に傍点]、実に根本問題を解決するの力がある[#「実に根本問題を解決するの力がある」に傍点]、其美風を有せる歌人にあっては、此研究や自覚は遠き昔に於て結了せられたであろう、多くの人は晩食に臨で必ず容儀を整え女子の如きは服装を替えて化粧をなす等形式六つかしきを見て、単に面倒なる風習事々しき形式と考え、是を軽視するの趣あれど、そは思わざるも甚しと云わねばならぬ、斯く式広を確立したればこそ、力ある美風も成立って、家庭を統一し進んで社会を支配することも出来たのである、娯楽本能主義で礼儀の精神がなければ必ず散漫に流れて日常の作法とはならぬ[#「娯楽本能主義で礼儀の精神がなければ必ず散漫に流れて日常の作法とはならぬ」に傍点]、是に反し礼儀を本能とした娯楽の趣味が少ければ[#「是に反し礼儀を本能とした娯楽の趣味が少ければ」に傍
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