と雲表の中に崇高な天上の歓喜を感ずるように、外洋に向った荒磯にでて、南洋はるか共栄圏の島々をかんじ、鵬程一万粁の海上を望んで、只一人怒濤の巌上に皇土を踏みしめているうれしさ、この悠久たる釣戯、まるで私達は神代を今に生活するような鬱勃たる生気に浸ることが出来る。
 磯釣りのよさはそこにある、その有限と無限の境界線に立って、白日の夢のように、永遠なる自然界に没入し、あらゆる意識を去って魚と遊び争う生物としての歓楽にある。普通人にとっては、ただ風と浪と岩ばかりの海岸線も、こうして島国日本のふしぎな魅力を感ずるというのも、考えようによっては釣人にとっての役得である。



底本:「日本の名随筆4 釣」作品社
   1982(昭和57)年10月25日第1刷発行
   1995(平成7)年3月30日第24刷
入力:浅葱
校正:門田裕志
2005年1月7日作成
青空文庫作成ファイル:
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