あかつきの空をさして飛んだ。モヤモヤと川霧が立ちのぼって河が乳白色にぼかされてゆく。かいの音はまだきこえない。
「遅《おそ》いな」
 とガーネットがいった。
「なにかまちがいがあったのじゃなかろうか」
 とサービスが不安そうにいう。
「ぼくは兄さんを信ずる、だいじょうぶだ」
 と次郎がフハンの鼻をなでながら力強くいった。フハンは次郎のひざにうずくまって眼を細めていた。
 富士男とモコウが出発したのち、万一をおもんばかったゴルドンは、年長組のガーネット、サービス、バクスターとはかって、河を見張《みは》りすることにした、意見は一致した。
「だが、バクスター君だけは、幼年組の保護《ほご》のために残ってくれたまえ、でないと幼年組が心細《こころぼそ》がるだろうから」
「そのかわりにぼくがゆきます」
 と次郎がいった。
「いや、幼年組はとどまってもらう、夜気にあたって病気になったらたいへんだからね」
 とゴルドンがやさしくいった。
「いや、ぼくの身になってください、ぼくはじっとしていられないんです、兄さんにだけ危険をおしつけて、弟がどうして安閑《あんかん》とできましょう。ぼくは病気にならないように
前へ 次へ
全254ページ中169ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング