五少年諸君が心を一にして一糸みだれず、すべて連盟の規約《きやく》を遵守《じゅんしゅ》したる一点であります。日英米仏伊印独支《にちえいべいふついいんどくし》、八ヵ国の少年は、おのおのその国を異《こと》にし、人種を異にしておりますが、その共同精神、すなわち国籍や人種を超越《ちょうえつ》した、世界人類という大きな気持ちの上に一致したということは、やがてわれわれおとなどもが、国際的の小さな感情をすてて、全世界の幸福のために一|致共同《ちきょうどう》しうべきことを、われわれに教えたものであります。われわれが実行せんとしてあたわざりしものを、十五少年諸君がまず実行された、これじつにおどろくべきことではありませんか。共同一致の力は、二年間の風雨と戦って、全勝を占《し》めました。われわれは少年諸君にあたえられた、この教訓を閑却《かんきゃく》してはなりません、わたくしはいま世界平和の天使として、少年連盟を礼賛《らいさん》したいと思います」
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 付記 名犬フハンは、いたるところ市民のごちそうを受け、そのために一時は腸《ちょう》をわずらいしが、ほどなく全快、いまは数十頭の子を生んで、しごく強健《きょうけん》に暮らしている。



底本:「少年連盟」少年倶楽部文庫、講談社
   1976(昭和51)年4月16日第1刷発行
初出:「少年倶楽部」
   1931(昭和6)年8月号〜1932(昭和7)年6月号
入力:゛゜゛゜
校正:土屋隆
2008年1月28日作成
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