たんぼう》したために、一島をも見ることができなかったのである。ただ最初に富士男が、モコウとともに平和湖を横ぎって探検したさい、サクラ湾で見た一小白点は、雪をいただくアンデス山中の一高峰であったことは疑いない。またたこに乗って空中から見た火光は、同じ山脈中の一火山である。
「わたしたちが伝馬船《てんません》を手に入れてこの島を出るとしても、どの方向にすすみますか」
とゴルドンは問うた。
「チリー国の沿岸は、曲折《きょくせつ》出入が多くてはなはだ危険であるが、ここより一直線に南航してチリー国の港に入港すれば、チリー国の住民はみな親切であるから、便船《びんせん》を求める便宜《べんぎ》はえられると思う」
とイバンスは答えた。
「チリー国の南端に港がありますか」
「チリー国の南端にタマル港があるが、もし荒廃《こうはい》していれば、さらに南に航路をとって、マゼラン海峡に出れば、ガーラント港があります。ここへゆけば、かならず豪州《ごうしゅう》行きの便船《びんせん》はあるはずです」
じじつマゼラン海峡に出れば、各国の船が通過している、イバンスの説明はますます少年を歓喜せしめた。
しかしかれらが帰国の便宜をうるためには、まず海蛇《うみへび》らの持っている、伝馬船をうばわねばならぬ、それには一戦はまぬがれないのである。
敵は七人であるとはいえ、くっきょうのおとなどもで、食人鬼《しょくじんき》のごとくどうもうなる暴漢《ぼうかん》である、味方は数こそ多いが、筋骨《きんこつ》いまだ固まらざる十六歳に満つや満たずの少年たちである、これを思うと、だれもみな一まつの不安を感ぜずにはおられなかった。
イバンスは、敵襲《てきしゅう》のばあいの防備をするために、洞の内外を巡覧《じゅんらん》した。洞はニュージーランド川に面し、平和湖の浜を左にひかえている。窓は矢間《やざま》の用をなし、ここには二個の大砲と、八個の旋条銃《せんじょうじゅう》が用意されているほかに、なお多くの武器がある。
武器、弾薬、食料の豊富、それだけをたのみに、死守するよりほかに道がない。
しかしかれら七名は、全部|凶悪《きょうあく》なものばかりだろうか。
「かれらのなかでホーベスは、良心を持っていると思いますが」
とケートはイバンスにいった。
「いやホーベスは最初は善心であったが、いまでは良心がなくなっています。現にぼ
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