恨《かいこん》の情にせめられた。
「富士男君! ぼくをゆるしてくれたまえ、ぼくはなんといって感謝していいかわからない!」
 ドノバンはボロボロと涙をこぼした。
「なんでもないよ、ドノバン君、きみだってぼくの地位に立ったら、ぼくを救ってくれたにちがいない、そんなことはどうでもいいじゃないか、おたがいのことだよ、それよりぼくらは、早くここを去らねばならない」
「どうして?」
 とイルコックがいった。
「道々、話すよ、さあゆこう」
 と富士男が四人をせきたてた。
 かれはことば短かに、海蛇《うみへび》らの凶悪無慚《きょうあくむざん》を語った。
「セルベン号! それはぼくらも知ってる」
 と四人が同時にさけんだ。
「そのためにぼくらを救いにきてくれたのだね」
 とドノバンが感きわまっていった。
「いま、ぼくらは一|致協力《ちきょうりょく》して大敵にあたらねばならないのだ」
 と富士男がいった。
「ではぼくの発砲《はっぽう》をとめたのもそのためだね」
 とイルコックがいった。
「そうだ、万一悪漢どもにきこえたらたいへんだからね」
「ああぼくははずかしい、きみはぼくよりも、百|段《だん》もすぐれた人だ、富士男君! なんでも命令してくれたまえ、ぼくはきみの命令ならなんでも服従する」
 とさすが倣岸《ごうがん》のドノバンも、富士男の勇気と思慮《しりょ》と大きな愛の前に頭をたれた。かれはかたく富士男の手をにぎった。
「日本人はえらい!」
 とイルコックがさけんだ。
「これが、ほんとの大和魂《やまとだましい》っていうんだ」
 とウエップがいった。
「そんなにほめてくれてぼくこそはずかしい」
 と富士男がほおを赤くした。
「ぼくはただ当然《とうぜん》のことをしたまでだよ」

     富士男の冒険《ぼうけん》

 星の光がうすれて、黒々ともりあがった森のかなたの空が、ポッとほの黄色くあかつきの色を点じた。
「夜が明けたぞ」
 とサービスがいった。声は寒さにふるえている、春とはいえ未明《みめい》の河畔《かはん》の空気はつめたい。悪漢どもの目につくことをおそれて火気は禁じられているのだ、寒いが、危険をおかして捜索《そうさく》に出た友の身の上を思えばなんでもない、各自はかたくくちびるをかんで一行の帰りを待った。
 じょじょに東の天《そら》は紅《あか》みをましてゆく。草むらが動いて、目ざめた鳥が
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