に往来して、いまだに秘密に行なわれている奴隷《どれい》売買をいとなんで、一|攫《かく》千金をえようとしたのだ。いまその喧嘩《けんか》の口実《こうじつ》ができた。
「どうしてもきかねえのか」
 と海蛇が、酒でにごった眼をギラギラと光らした。
「あたりまえだ」
 と船長があおくなっていった。
「おれたちにうまいものを食わせろ」
 とひとりがさけんだ。
「うるさい! でてゆけ!」
 と船長がさけんだ。
「どうしてもか?」
「親分めんどうくせえ、やっつけろよ」
 と四本指がそそのかした。
「よし」
 と海蛇がポケットをさぐって、ピストルを出すと、船長をめがけて一発をはなった。
「アッ」と悲鳴《ひめい》とともに、船長があけにそまって倒れた。
「野郎《やろう》ども! ぬかりなくやれよ」
 と海蛇がどなった。血を見て凶暴《きょうぼう》になったかれらは、かねての計画を実行に移《うつ》した、まもなくベン夫妻と、一等運転手がたおされた。悪漢《あっかん》どもは完全にセルベン号を占領《せんりょう》した。
 ケートはあやうくのがれて、運転手室にかけこんだ、そこにはスペイン人のイバンスが、当直《とうちょく》の勤務をしていた、かれは三十前後の温良な人物である。
「助けて!」
「どうしたんです」
 とイバンスがびっくりしていった。
「船長さんが、ご主人夫妻が……殺されたのです」
 こういったとき、どやどやと悪漢どもが、足音あらくふみこんだ。海蛇を先頭に七人が目をギラギラ光らして、ピストルと刀を持って威嚇《いかく》した。
「殺すのか」
 とイバンスが、ケートをかばった。
「いや、運転手さん。おまえは助けてあげるよ、だが、おれたちの命令にそむきゃ、ようしゃはしねえ」
 と海蛇がいった。じっさいいまイバンスを殺しては、船の運転がとまってしまう。
「親分、あの女はどうしよう」
 と四本指がいった。
「ついでに助けてやれ」
 かくてイバンスとケートは、運転手室にとじこめられて、厳重な監視《かんし》をうけた。不安のうちに三日すぎた。と、どうしたことか四日目の晩、船はにわかに火を発して見る見る火焔《かえん》につつまれてしまった。
 悪漢どもはあわてふためいて、伝馬船《てんません》をおろした。若干《じゃっかん》の食物と数丁の武器と弾薬がかろうじてとりだすことができた。
「まぬけめ! おちついてやれ」
 と海蛇がど
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