ったり、種族《しゅぞく》をののしったりすることはつつましまなければならん。他をののしることはやがてみずからをののしることなのだ、がんらい少年連盟は八ヵ国の少年をもって組織《そしき》された世界の王国なのだ。もし人がぼくにむかってきみはどの国民かときいたなら、ぼくはいまたちどころに答えるであろう、僕は少年連盟国の人民ですと。この島にあるかぎりはぼくは連盟をもって僕の国籍《こくせき》とする、それでなければ長い長いあいだの洞窟生活《どうくつせいかつ》ができべきはずがない。じっさいぼくは連盟国のひとりとして世界に立ちたい、もしさいわいにぶじにニュージーランドへ帰ることができれば、ぼくはさらに連盟を拡大《かくだい》して世界の少年とともに、健全な王国を組織《そしき》したいと思っているのだ。ドノバンはなんのためにその頑冥《がんめい》なほこりと愚劣《ぐれつ》な人種差別とをすてることができないのだろう。なぜその偏狭《へんきょう》な胸をおしひらいて心の底からぼくらと兄弟になることができないのだろう。日本のことわざに交《まじ》わりは淡《たん》として水のごとしというのがある、日本人は水のごとしだ、清浄《せいじょう》だ、淡白《たんぱく》だ、どんな人とでも胸をひらいて交《まじ》わることができる。しかるに米国人たるドノバンはいつもにごっている。ぼくは日本をほこるのじゃない、米国をののしるのじゃない、しかしきょうこんなさわぎになったのをみて諸君の公平な眼で見た裁判《さいばん》に一任する。ぼくが正しいか、ドノバンが正しいか、ジャップたるぼくが正しいとすれば、ヤンキーたるドノバンはのろわれねばならん、そうしてその国の名誉《めいよ》もけがされねばならん」
「そのとおりだ」
とゴルドンはげんぜんとしていった。
「ドノバン君、あやまりたまえ」
「いやだ」とドノバンはいった。「きみはいつでも富士男君のかたをもつんだね」
「富士男君は正しいからだ、ぼくは連盟の総裁《そうさい》として正しきにくみするだけだ、どう考えてもきみは悪い」
「悪くないよ」
「まあ待てよ、きみはいま昂奮《こうふん》してるから、とにかく森のほうへでも行って熱気《ねっき》をさましてきたまえ、富士男君もそれまであまり追究《ついきゅう》せずにいてくれたまえ」
「ぼくはいつでもドノバン君と握手《あくしゅ》したいと思っているよ」
と富士男はいった。
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