う報告をもたらした。
「校長が立憲党のために運動したので諭旨免官《ゆしめんかん》となるんだそうだ」
これは生徒にとってあまりにふしぎなことであった。
「どういうわけだ」
「校長はね、柳の家へしばしば出入りしたのを見た者があるんだよ」
と手塚がいった。「それで阪井の親父《おやじ》が校長|排斥《はいせき》をやったんだ」
「それは大変な間違《まちが》いだ」と光一は叫んだ。「先生がぼくの家へきたのは二度だ、それは学校で負傷させたのは校長の責任だというので校長自身でぼくの父にあやまりにきたのと、いま一つはぼくの見舞いのためだ、先生はぼくの枕元《まくらもと》にすわってぼくの顔を見つめたままほかのことはなんにもいわない、ぼくの父とふたりで話したこともないのだ」
「そりゃ、そうだろうとも」と人々はいった。
「もしそれでも校長が悪いというなら、われわれはかくごを決めなきゃならん」と捕手の小原がいった。
「無論だ、学校を焼いてしまえ」とライオンがいった。
「へんなことをいうな」と捕手はライオンをしかりつけて、「こんどこそはだぞ、諸君! 関東男児の意気を示すのはこのときだ、いいか諸君! 天下広しといえど
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