てもいいよ、おたがいに練習だからね」
「相談してみよう」
「きみはなにをやってるか」
「ぼくはショートだ」
「それがいい、きみは頭がよくて敏捷《びんしょう》だから」
「きみは」
「ぼくは今度からピッチャーをやってるんだよ」
「すてきだね」
「なかなかまずいんだよ、手塚はショートだ、あいつはなかなかうまいよ」
 その夜千三は塾《じゅく》で一同に相談した。
「やろうやろう」というものがある。
「とてもかなわない」というものもある。議論はいろいろにわかれたが結局安場にきてもらってきめることになった。
 安場は翌日やってきた。
「やれやれ、大いにやれ、親から金をもらって洋服を着て学問するやつに強いやつがあるものか、わが校の威風を示すのはこのときだ」
 一同はすぐ決心した、毎夜課業がすむとこそこそそのことばかりを語りあった、だが悲しいことには貧乏人の子である、マークのついた帽子や、ユニフォームを買うことはできない、いわんやスパイクのついた靴、プロテクター、すねあてにおいてをや[#「をや」は底本では「おや」]である。
「銭がほしいなあ」と一同はいった、この話がいつしか黙々《もくもく》先生にもれた、
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