賭博《ばくち》をしたりするのが侠客だという人だ、だからおれはそれをまねて見たんだ、だがそれは間違ってるね、悪いことをして人よりえらくなろうというのは泥棒して金持ちになろうとするのと同じものだね、そう思わないか」
「そうだとも」
「だからさ……」
阪井はこういったとき、傷《きず》がいたむので眉をひそめた。
「君の家まで送ってゆこう」と柳はいった。
「かまわない、もう少し歩こう」
阪井はふたたびなにかいいつづけようとしたが急に口をつぐんで悲しそうな顔をした。
「車に乗れよ」
「何でもないよ……ねえ柳、ぼくはおまえにききたいことがあるんだが」
「なんだ」
「一年のとき、重盛《しげもり》の諫言《かんげん》を読んだね」
「ああ、忠孝両道のところだろう」
「うん、君に忠ならんとすれば親に孝ならず、重盛《しげもり》はかわいそうだね」
「ああ」
「清盛《きよもり》は悪いやつだね」
「ああ」
「重盛《しげもり》がいくらいさめても清盛《きよもり》が改心しなかったのだね」
「ああ」
「それで重盛はどうしたろう」
「熊野《くまの》の神様に死を祈《いの》ったじゃないか」
「そうだ、死を祈った、なぜ死のうとし
前へ
次へ
全283ページ中133ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング