て錙銖を計らんとするは何ぞやと。然れ共いつかな聴入れず。日課を左の如く定めたり。
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一、朝飯前必ず草一荷を刈る事。
一、朝飯後には藍ねせ小屋に入り、凡二時間商用に従ふ事。
一、右終りて寺入りせる小児等に手習を授くる事。
一、夕飯後また藍ねせ小屋を見廻り、夜に入りて、寺院に会して朋友と漢籍の温習をなす事。
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藍玉の原料仕入は、毎年残暑の頃にして、前後三十日許は日夜非常の運動なり。一日近村に原料を集む。炎熱焼くが如くにして、沿道たま/\瓜を鬻ぐ。予乃ち食はんと欲して其価を問へば、曰く五十文なりと。(当時米価の廉なるに反して、瓜西瓜などは非常に高し)予や此日未だ一銭をも儲けざる為に、五十文の銭を惜むこと甚しく、遂に買はずして去れり。思ふに是れ父が所謂商人根性に陥れるものならん。然れども此の如くにして拮据経営、三年にして三百両を儲け得たり。」
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世間では、翁の鉱毒運動を佐倉宗吾と並べて語るものがあるが、宗吾の農民運動と並称すべき翁の行動は、既に二十歳の名主時代に一度やつて居る。
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