斜にかぶせ、細き竹に糸を付け、小鳥が餌にうゑて降りるを見て糸を引きて取る。一羽二羽は取れ申候。近年鉱毒被害の為め小鳥少なく、二十歳以下の者この例を知るものなし。正月の節よりも十日もたちまして雪が七寸乃至一尺も降りまして、寒気は左程ゆるみましたとも見えませぬけれど、最早陽気でございまして、翌る日晴天になりますと、雪は八九時十時頃より段々解けまする。田圃でも日向のよい箇所は、所々土が雪より現はれます陽炎《かげろふ》が立ちまする有様、陽気が土中より登りて湯気の如くに立ちのぼる。然るに鉱毒被害深さ八九寸より三尺に渡り候、田圃には更に陽気の立ち上ぼるを見ず。」
「清明三月の節になりますると、藪の中や林の縁に、野菊や野芹や蕗《ふき》や三ツ葉うど抔《など》が多くありました。川端には、くこ抔と申すが多くありました。三月の節句に草餅を舂《つ》きまするに、蓬《よもぎ》が多くありまして、摘みましたものでござりますが、只今では、鉱毒地には蓬が少なき故、利根川堤や山の手へ行つて摘んで参ります。近年は無拠《よんどころなく》、蓬の代りに青粉と申すを買ひまして、舂きまする。桜の花の盛りをマルタ魚の最中とし、梨の花盛り
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