さかはた》の雲龍寺に撞き鳴らす警鐘を合圖に簔笠、糧を包みて集會せるもの二百、三百忽にして五百、警官の制止を峻拒して舘林の町を打ち過ぎ利根の渡に押し寄せたる者二千五百と注せられぬ、川舟二艘を大八車に打ち載せ舟の前に斜めに切りたる青竹數竿を鉾の如くに裝ひたるを挽き、同勢之に從ひ、野州安蘇郡界村の助役野口春藏と言へるは筒袖に韮山笠を戴き南無阿彌陀佛と書きたる白旗採つて馬上に指揮せり、若し警官の之を制止せんとするに逢へば、かの竹鉾を裝置せる舟車を以て突貫して進みたり、
之を防がんとて利根の川邊に集りたるは憲兵二十警官二百五十餘名、埼玉あたりより應援せるも少なからず、今は止むを得ず捕縛すべしとの一令を發して打ち向ふと共に群集は遂に解散せり、捕縛せられたる者二十四名、負傷したるは彼方にも此方にもありしと云ふ、
さて此の擧にあづかれる被害地人民とは上州に在りては邑樂《おうら》郡の多々良、渡瀬、大島、西谷田、海老瀬、郷谷《さとや》、大毛野の諸村、野州に在りては足利郡の毛野、吾妻、久野、安蘇《あそ》郡の植野、犬伏、界、高山、下都賀郡の谷中の諸村、又た埼玉縣下にては北埼玉郡なる利島、川邊の諸村なりとぞ、

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