物が、聞けば又《ま》た戦争とか始まるさうで、私《わし》の村からも三四人急に召し上げられましたが、兵隊に取られるものに限つて、貧乏人で御座りますよ、成程|其筈《そのはず》で、年中働いて居るので身体《からだ》が丈夫、丈夫だから兵隊に取られる、――此頃も郡役所の小役人が帽子《シヤツポ》など被《かぶ》つて来まして、国の為めに死ぬんだで、有難いことだなんて言ひましたが、斯様《こんな》馬鹿な話がありますか、――近い例証《ためし》が十年前の支那の戦争で、村から取られた兵隊が一人死にましたが、ヤア村の誉《ほまれ》になるなんて、鎮守の杜《もり》に大きな石碑建てて、役人など多勢来て、大金使つて、大騒ぎして、お祭を行《や》りましたが、一人息子に死なれた年老《としと》つた両親《ふたおや》は、稼人《かせぎて》が無くなつたので、地主から、田地を取り上げられる、税を納めねいので、役場からは有りもせぬ家財を売り払はれる、抵当に入れた馬小屋見たよな家は、金主から逐《お》つ立てられる、到頭《たうとう》村で建てて呉れた自分の息子の石碑の横で、夫婦が首を縊《くゝ》つて終ひましたよ、爺《ぢい》と媼《ばゝあ》の情死《しんぢゆう》
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