》びつ「其れから皆《みん》なして遺骸《おからだ》を、御宅へ担《かつ》いで参《めえ》りましたが、――御大病の御新造様《ごしんぞさま》が態々《わざ/\》玄関まで御出掛けなされて、御丁寧な御挨拶《ごあいさつ》、すると旦那、貴郎《あなたさま》だ、其時|丁度《ちやうど》十二三の坊様が、長い刀を持ち出しなされて、父《とつ》ちやんの復讐《かたきうち》に行くと言ひなさる、其れを今の粟野《あはの》に御座る伯母御様が緊乎《しつかり》抱き留めておすかしなさる――イヤもう、皆な御庭に座つて泣きましたよ」
 老人は声曇らせて月影に面《おもて》を背向《そむ》けぬ、
「御老人」と篠田もソゾろ懐旧の感に打《うた》れやしけん、
 袂《たもと》より取り出せる襤褸《ぼろ》もて老人は鼻打ちかみ「其れから間もなく御新造様は御亡《おなく》なり、貴郎《あなたさま》は伯母御様に手を引かれなさつて、粟野の奥へ行かしやる、――何でも長左衛門様の讐討《かたきう》たんぢやならねエと言ふんで、伯母御様の所から逃げ出しなすつて、外国迄も行つて修業なすつて、偉《えら》い人《かた》にならしやつたと云ふことは薄々聞いて居《をり》ましたが、――どうも思
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