、堪《た》まりませんの」
「花ちやん、其様《そんな》に柔《やさ》しく言うてお呉れだと、何だかお前さんが米ちやんの様に思はれてネ」
「老女《おば》さん、私《わたし》も左様《さう》ですよ、始めて此方《こちら》へ上つて――疲れたらうから早くお寝《やすみ》ツて仰《おつしや》つて下だすツて、老女さんの傍へ寝せて戴いた時――私、ほんとに母の懐へ抱かれでもした様な気がしましてネ、五体《からだ》が延《のん》びりして、始めてアヽ世界は広いものだと、心の底から思ひましたの、――私、老女さん、二十年前に別れた母が未だ存《ながら》へて居て、丁度《ちやうど》廻り合つたのだと思つて孝行しますから――私の様なアバずれ者でも何卒《どうぞ》、老女さん、行衛《ゆくゑ》知れずの娘が帰つて来たと思つて下ださいナ」
 老婆は涙にムセびつゝ、首肯《うなづ》くのみ、
「オヽ、嬉しい」と、お花は涙一杯の美しき眼に老婆を仰ぎつ「ぢや、今から阿母《おつか》さんと言つても可《よ》う御座んすか――何だか全《まる》で夢の様ですのねネ――昨日までの邪慳《じやけん》な心が、何処へか去《い》つて仕舞つたの――私《わたし》ヤ、すつかり生れ変はりました
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