かと、ほんとに驚いて仕舞ひますの」とお加女は目を細くして強ひて笑ひつ、
「お客来《きやくらい》の所へ参《あが》りまして、伯母さん、飛んだお邪魔致しましてネ」と梅子の気兼ねするに「ほんとにねエ」とお加女も相和す、
「何の、貴女《あなた》」と、お熊は刺しつ「日常《しよつちゆう》来《いら》つしやるお客様でネ、家内同様の方なんですから、気兼も何もありやしませんよ、山木の御家内なら、寧《いつ》そ同席《いつしよ》に御馳走にならうつて仰《おつ》しやるんですよ、梅子さん、磊落《きさく》な方ですから、何卒御遠慮なくネ」
カラ/\と打ち笑ふ男の声聞えて、主人の利八と物語りつゝ、階子《はしご》上り来《きた》るは、今しもお熊の噂《うはさ》せる其人なるべし、
襖《ふすま》手荒らに開かれて現はれたる一丈天、其の衣《きぬ》の身に合はず見ゆるは、大洞《おほほら》のをや仮り着せるならん、既に稍々《やゝ》酒気を帯びたる面《かほ》を燈火《ともしび》に照らしつ、立ちたるまゝに「ヤア、山木の内君――新年先づ御目出たう」
「まア、何殿《どなた》かと思ひましたら、貴所《あなたさま》ですか――姉さん、酷《ひど》いことねエ、知らして下ださらぬもんですから、飛んだ失礼致したぢや御座んせんか」と、お加女はホヽと笑《ゑみ》傾け「あら、私《わたし》としたことが、御挨拶《ごあいさつ》も致しませんで――どうも旧年中は一方ならぬ御世話様に預りまして、何卒相変りませず」
「イヤ、左様《さう》固く出られると大《おほい》に閉口する――お互様ぢや」と、客は無頓着《むとんちやく》に打ち笑ひ「知らぬ方でもないので、御邪魔に来ました」
「さア、何卒《どうぞ》是れへ」とお加女が座をいざりて上座を譲らんとするを「ヤ、床の置物は御免《ごめん》蒙《かう》むらう」と、客は却《かへつ》て梅子の座側に近づかんとす、
お熊も興《きよう》がりて「其の方が可《よう》御座んす、どうせ、貴所《あなた》は家内《うち》の人も同様で在《いら》つしやるんですから」と言ふを「成程、其れが西洋式でがすかナ」と利八も笑ふ、
梅子の左側に客はドツかと座に就きぬ「令嬢失礼致します」
梅子は只《た》だ慇懃《いんぎん》に黙礼せるのみ、
「オヽ、梅子」とお加女は顧み「お前さんは未《ま》だお初《は》つに御目に懸《かゝ》るんでしたネ、此方《このかた》が阿父《おとつさん》の一方ならぬ御
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