んなことの言われるのも不快で、顔までも上に着た物の中へ引き入れて浮舟は寝ていた。
主人の尼君は少年の話し相手に出て、
「物怪《もののけ》の仕業《しわざ》でしょうね。普通のふうにお見えになる時もなくて始終御病気続きでね。それで落飾もなすったのを、御縁のある方が訪ねておいでになった時に、これでは申しわけがないとそばにいて気をもんでおりましたとおりに、大将さんの奥様でおありになったのでございますってね。それをはじめて承知いたしまして、なんともお詫《わ》びのしかたもないように思います。ずっと御気分は晴れ晴れしくないのですが、思いがけぬ御消息のございましたことでまたお心も乱れるのでしょう。平生以上に今日はお気むずかしくなっていらっしゃるようですよ」
などと語っていた。山里相応な饗応《きょうおう》をするのであったが、少年の心は落ち着かぬらしかった。
「私がお使いに選ばれて来ましたことに対しても何かひと言だけは言ってくださいませんか」
「ほんとうに」
と言い、それを伝えたが、姫君はものも言われないふうであるのに、尼君は失望して、
「ただこんなようにたよりないふうでおいでになったと御報告をなさる
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