君の所へ持って来て見せるとその人は顔を赤くして、自分のことが明らかに知れてしまったのであろうか、物隠しをし続けたと尼君に恨まれてもしかたのない義理の立たぬことであると思うと、返辞のしようもなくそのまま黙っていると、
「今でもいいのですから言ってください。恨めしいお心ですね、私に隔てをお持ちになって」
と恨めしがるのであるが、何がどうであるかの理解はまだできないで、尼君はただわくわくとしているうちに、
「山の僧都のお手紙を持っておいでになった方があります」
と女房がしらせに来た。怪しく尼君は思うのであるが、今度のがものを分明にしてくれる兄の手紙であろう、使いでもあろうと思い、
「こちらへ」
と言わせると、きれいなきゃしゃな姿で美装した童《わらべ》が縁を歩いて来た。円座を出すと、御簾《みす》の所へ膝《ひざ》をついて、
「こんなふうなお取り扱いは受けないでいいように僧都はおっしゃったのでしたが」
その子はこう言った。尼君が自身で応接に出た。持参された僧都の手紙を受け取って見ると、入道の姫君の御方へ、山よりとして署名が正しくしてあった。
まちがいではないかということもできぬ気がして姫
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