でございますよ」
こんなことを言う。並み並みの家の娘などのように聞こえることもはばからず言う女であるといやな気のした薫は、
「もとから血族であるためというようなことでなしに、好意を持つ男として、何かの御用をお命じくだすったらうれしいだろうと思います。うとうとしくお取り次ぎでお話などをしてくださるだけでは私も尽くしたいことがお尽くしできない」
と言った。そうであったというふうに女房たちは思い、姫君を引き動かすばかりにしたはずであったから、
「松も昔の(たれをかも知る人にせん高砂《たかさご》の)と申すような孤立のたよりなさの思われます私を、血族の者とお認めくださいましておっしゃってくださいますあなたは頼もしい方に思われます」
取り次ぎの者に言うというふうにでもなしに、こういう声は若々しく愛嬌《あいきょう》があって優しい味があった。ただの女房としてであればよい感じに受け取れたであろうが、今の身になっては、すぐに人に逢ってこれだけの言葉もみずから発しなければならぬものと思うようになったかと考えるとこの人を飽き足らぬものに薫は思われた。容貌《ようぼう》も必ず艶《えん》な人であろうと思い、見
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