おとな》の女房が三人ほど、それと童女がいた。大人は唐衣《からぎぬ》、童女は袗《かざみ》も上に着ずくつろいだ姿になっていたから、宮などの御座所になっているものとも見えないのに、白い羅《うすもの》を着て、手の上に氷の小さい一切れを置き、騒いでいる人たちを少し微笑をしながらながめておいでになる方のお顔が、言葉では言い現わせぬほどにお美しかった。非常に暑い日であったから、多いお髪《ぐし》を苦しく思召すのか肩からこちら側へ少し寄せて斜めになびかせておいでになる美しさはたとえるものもないお姿であった。多くの美人を今まで見てきたが、それらに比べられようとは思われない高貴な美であった。御前にいる人は皆土のような顔をしたものばかりであるとも思われるのであったが、気を静めて見ると、黄の涼絹《すずし》の単衣《ひとえ》に淡紫《うすむらさき》の裳《も》をつけて扇を使っている人などは少し気品があり、女らしく思われたが、そうした人にとって氷は取り扱いにくそうに見えた。
「そのままにして、御覧だけなさいましよ」
と朋輩《ほうばい》に言って笑った声に愛嬌《あいきょう》があった。声を聞いた時に薫は、はじめてその人が友人
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