終わって仏前の飾りが取り払われ、室内の装飾を改めるために、北側の座敷などへも皆人がはいって、旧態にかえそうとする騒ぎのために、西の廊の座敷のほうへ一品の姫宮は行っておいでになった。日々の多くの講義に聞き疲れて女房たちも皆|部屋《へや》へ上がっていて、お居間に侍している者の少ない夕方に、薫の大将は衣服を改めて、今日退出する僧の一人に必ず言っておく用で釣殿《つりどの》のほうへ行ってみたが、もう僧たちは退散したあとで、だれもいなかったから、池の見えるほうへ行ってしばらく休息したあとで、人影も少なくなっているのを見て、この人の女の友人である小宰相などのために、隔てを仮に几帳《きちょう》などでして休息所のできているのはここらであろうか、人の衣擦《きぬず》れの音がすると思い、内廊下の襖子《からかみ》の細くあいた所から、静かに中をのぞいて見ると、平生女房級の人の部屋《へや》になっている時などとは違い、晴れ晴れしく室内の装飾ができていて、幾つも立ち違いに置かれた几帳はかえって、その間から向こうが見通されてあらわなのであった。氷を何かの蓋《ふた》の上に置いて、それを割ろうとする人が大騒ぎしている。大人《
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