くわしく聞くこともせずに帰ってまいった。そして山荘の出来事を取り次ぎによっておしらせしたのであった。宮は夢とよりお思われにならない。ひどく病をしているというふうでもなく、いつも気分がすぐれぬとは書いてあったが、昨日《きのう》の返事にはそれも書かず、平生のものよりも情の見えることを言って来たではないかと不思議にばかりお思われになって、時方《ときかた》に自身で宇治へ行き確かなことを調べて来るようにお命じになった。
「あの大将のお耳にどんなことがはいったのですか、宿直《とのい》をする者が忠実に役を勤めないというお叱《しか》りがあったとかで、私の侍が使いにまいったり、帰ったりいたしますのさえ、見つけますと調べ立てるようなことをする者らがあるそうなのですから、口実なしに私が行きまして、それが大将さんへ知れますとあなた様の御迷惑になることが起こるのではございませんでしょうか。そしてまた人が急病でお死にになった所などというものはおおぜいの人が集まってもいるでしょうから」
「だからといって、訳のわからぬままにしておけるものではない。何とか口実を作って行って、こちらの味方になっている侍従などに逢《あ》っ
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