の縁でもこうして捜し出される結果を見たように、姉である方に、自分がどうしているか、どんな恋愛からどうなったかが知れていかないはずはないと、考えをたどっていけば、宮の御手へ将来をゆだねてしまうのは善事を行なうことでない、大将に愛されなくなるほうがどんなに苦痛であるかしれぬと煩悶している時に薫からの使いが山荘へ来た。かわるがわるに二人の男の消息を読むことは気恥ずかしくて、浮舟はまださっきの宮のほうの長い手紙ばかりを寝ながら見ていると、それと知って侍従と右近は顔を見合わせて、姫君の心はのちの情人に移ったと言わないようで言っていた。
「ごもっともですわ。殿様は二人とない美男でいらっしゃると思っていましたのは前のことで、宮様はなんと申してもすぐれていらっしゃいますもの、お部屋着になっておいでになった時の愛嬌《あいきょう》などはどうだったでしょう。私ならその方があれまではげしく思っておいでになるのを見れば黙視していられないでしょう。中宮《ちゅうぐう》様の女房を志願して、そして始終お逢いのできるようにしますわ」
 こう言っているのは侍従である。
「危険な人ね、あなたは。殿様よりすぐれた風采《ふうさい》の方がどこにあるものですか。お顔はまあともかくも、お気質《きだて》なり、御様子なりすばらしいのは殿様ですよ。何にしてもお姫様はどうおなりあそばすかしら」
 右近はこう言っていた。今まで一人で苦心をしていた時よりも侍従という仲間が一人できて、嘘《うそ》ごとが作りやすくなっていた。あとから来たほうの手紙には、
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思いながら行きえないで日を送っています。ときどきはあなたのほうから手紙で私を責めてくださるほうがうれしい。私の愛は決して浅いものではないのですよ。
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 などと書かれ、端のほうに、

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ながめやる遠《をち》の里人いかならんはれぬながめにかきくらすころ

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平生以上にあなたの恋しく思われるころです。
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 とも書かれてあった。白い色紙を立文《たてぶみ》にしてあった。文字も繊細《きゃしゃ》な美しさはないが貴人の書らしかった。宮のお手紙は内容の多いものであったが、小さく結び文にしてあって、どちらにもとりどりの趣があるのである。
「さきのほうのお返事を、だれも見ませんうちにお書き
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