いろいろ遠慮がありましてね、こちらからお話を進める心はなかったのですが、前々からおっしゃってくださいますのを、先が並み並みの方でもいらっしゃらないためにもったいなくお気の毒に思われまして、お取り決めしたのですが、お父様の今ではない方なのですから、私一人で仕度《したく》をしていまして、そんなことで不都合だらけでお気に入らぬことはないかと今から心配をしています。娘は何人もありますが、保護者の父親《てておや》のあります子は、そのほうで心配をしてくれますことと安心していまして、この方の身の納まりだけを私はいろいろと苦労にして考えていまして、たくさんの若い方をそれとなく観察していたのですが、不安に思われることがどこかにある方ばかりで、結婚にまで話を進められませんでしたのに、少将さんは同情心に厚い性質だと伺いまして、こちらの資格の欠けたのも忘れてお約束をするまでになったのですが、私の大事な方を愛してくださらないようなことが起こり、世間体までも悪くなることがあっては悲しいだろうと思われます」
 と語った。
 仲介者はさっそく少将の所へ行って、常陸夫人の言葉を伝えた。すると少将の機嫌《きげん》は見る見
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