いと薫は悟った。大姫君に似たと言われたことに心が惹《ひ》かれて、
「そのよくおわかりにならないことはそのままでもいいのですから、もう少しくわしくお話をしてくださいませんか」
と中納言は望んだが、羞恥《しゅうち》を覚えて中の君は細かなことを言って聞かせなかった。
「その人を知りたく思召すのでございましたら、その辺と申すことくらいはお教え申してもいいのでございますが、私もくわしくは存じません。またあまり細かにお話をいたせばいやにおなりになることに違いございませんし」
「幻術師を遠い海へつかわされた話にも劣らず、あの世の人を捜し求めたい心は私にもあるのです。そうした故人の生まれ変わりの人と見ることはできなくても、現在のような慰めのない生活をしているよりはと思う心から、その方に興味が持たれます。人型として見るのに満足しようとする心から申せば山里の御堂《みどう》の本尊を考えないではおられません。なおもう少し確かな話を聞かせてくださいませんか」
中納言は新しい姫君へにわかに関心を持ち出して中の君を責めるのだった。
「でもお父様が子と認めてお置きになったのでもない人のことを、こんなにお話ししてし
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