ように総角《あげまき》の姫君の死んだのは悲しいことであった。引きとめることもできず、足摺《あしず》りしたいほどに薫は思い、人が何と思うともはばかる気はなくなっていた。臨終と見て中の君が自分もともに死にたいとはげしい悲嘆にくれたのも道理である。涙におぼれている女王を、例の忠告好きの女房たちは、こんな場合に肉親がそばで歎くのはよろしくないことになっていると言って、無理に他の室へ伴って行った。
 源中納言は死んだのを見ていても、これは事実でないであろう、夢ではないかと思って、台の灯《ひ》を高く掲げて近くへ寄せ、恋人をながめるのであったが、少し袖《そで》で隠している顔もただ眠っているようで、変わったと思われるところもなく美しく横たわっている姫君を、このままにして乾燥した玉虫の骸《から》のように永久に自分から離さずに置く方法があればよいと、こんなことも思った。遺骸《いがい》として始末するために人が髪を直した時に、さっと芳香が立った。それはなつかしい生きていた日のままのにおいであった。どの点でこの人に欠点があるとしてのけにくい執着を除けばいいのであろう、あまりにも完全な女性であった。この人の死が自
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