なった。
大姫君には琵琶《びわ》、中姫君(三女のなき時も次女は中姫と呼ぶ)には十三|絃《げん》の琴をそれに合わせながら始終教えておいでになるために、おもしろく弾くようになっていた。父帝にも母女御にも早くお死に別れになって、はかばかしい保護者をお持ちにならなんだために、宮は学問などを深くあそばす時がなかった。まして処世法などは知っておいでになるわけもない貴人と申してもまた驚くばかり上品で、おおような女のような弱い性質を備えておいでになって、父帝からお譲りになった御遺産とか、外戚《がいせき》の祖父である大臣の遺産とか、永久に減るものと思われない多くのものが、どこへだれが盗んで行ったか、なくなったかもしれぬことになってしまって、ただ室内の道具などにだけ華奢《かしゃ》な品々が多く残っていた。伺候する者もなく、お力になって差し上げようとする人たちもない。御徒然なために雅楽寮の音楽専門家のうちのすぐれたのをお呼び寄せになり、芸事ばかりを熱心にお習いになって大人《おとな》におなりになった方であるから、音楽にはひいでておいでになるのである。光源氏の弟宮の八の宮と呼ばれた方で、冷泉《れいぜい》院が東宮
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