》院が晩年に六条院へお託しになった姫宮の例をお思いになって、その姫君たちを得たい、つれづれをあるいは慰められるかもしれないと思召すのである。年の若い薫中将はかえって姫君たちの話に好奇心などは動かされずに、八の宮の悟り澄ましておいでになる御心境ばかりが羨望《せんぼう》されて、お目にかかりたいと深く思うのであった。
阿闍梨が帰って行く時にも、
「必ず宇治へ伺わせていただいて、宮のお教えを受けようと私は思いますから、あなたからまず内々思召しを伺っておいてください」
と薫は頼んだ。院の帝はお言葉で、
「寂しいお住居《すまい》の御様子を人づてで聞くことができました」
とも宮へお伝えさせになった。また、
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世をいとふ心は山に通へども八重立つ雲を君や隔つる
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という御歌もお託しになった。
阿闍梨は八の宮をお喜ばせするこのお役の誇りを先立てて山荘へまいった。普通の人から立てられる使いもまれな山蔭《やまかげ》へ、院のお便《たよ》りを持って阿闍梨が来たのであったから、宮は非常にうれしく思召して山里らしい酒肴《しゅこう》もお出しになっておねぎらいに
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