がおいでになるからって、後宮がほかにだれも侍していないでしょうか。君に仕えたてまつることでは義理とか遠慮とかをだれも超越してしまうことができると言って、宮仕えをおもしろいものに昔から言うのではありませんか。院の女御が感情を害されるようなことが起こってきて、世間でいろんな噂《うわさ》をされるようになれば、初めからこちらのしたことが間違いだったとだれにも思われるでしょう」
などとも中将は言った。兄弟がまたいっしょになっても非難するのを玉鬘《たまかずら》夫人は苦しく思った。
その新女御を院が御|寵愛《ちょうあい》あそばすことは月日とともに深くなった。七月からは妊娠をした。悪阻《つわり》に悩んでいる新女御の姿もまた美しい。世の中の男が騒いだのはもっともである、これほどの人を話だけでも無関心で聞いておられるわけはないのであると思われた。御|愛姫《あいき》を慰めようと思召して、音楽の遊びをその御殿でおさせになることが多くて、院は源侍従をも近くへお招きになるので、その人の琴の音《ね》などを薫は聞くことができた。この侍従が正月に「梅が枝」を歌いながら訪《たず》ねて行った時に、合わせて和琴を弾《ひ》
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