見えこぬ魂《たま》の行く方《へ》尋ねよ
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何によっても慰められぬ月日がたっていくにしたがい、院のお悲しみは深くばかりになった。
五節《ごせち》などといって、世の中がはなやかに明るくなるころ、大将の子息たちが殿上勤めにはじめて出たといって、六条院へ来た。二人とも非常に美しい。母方の叔父《おじ》である頭《とうの》中将や蔵人《くろうど》少将などが青摺《あおず》りの小忌衣《おみごろも》のきれいな姿で少年たちに付き添って来たのである。朗らかなふうのこうした若い人たちを御覧になる院は、御自身の青春の日もお振り返られになって昔のこの日の舞い姫に心をお惹《ひ》かれになったことなどもさすがになつかしいこととお思い出しになった。
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宮人は豊《とよ》の明りにいそぐ今日《けふ》日かげも知らで暮らしつるかな
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今年をこんなふうに隠忍してお通しになった院は、もう次の春になれば出家を実現させてよいわけであるとその用意を少しずつ始めようとされるのであったが、物哀れなお気持ちばかりがされた。院内の人々にもそれぞれ等差をつけて物を与えておい
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