源氏物語
まぼろし
紫式部
與謝野晶子訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)御簾《みす》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)御|風采《ふうさい》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−
[#地から3字上げ]大空の日の光さへつくる世のやうやく
[#地から3字上げ]近きここちこそすれ (晶子)
春の光を御覧になっても、六条院の暗いお気持ちが改まるものでもないのに、表へは新年の賀を申し入れる人たちが続いて参入するのを院はお加減が悪いようにお見せになって、御簾《みす》の中にばかりおいでになった。兵部卿《ひょうぶきょう》の宮のおいでになった時にだけはお居間のほうでお会いになろうという気持ちにおなりになって、まず歌をお取り次がせになった。
[#ここから2字下げ]
わが宿は花もてはやす人もなし何にか春の訪《たづ》ねきつらん
[#ここで字下げ終わり]
宮は涙ぐんでおしまいになって、
[#ここから2字下げ]
香をとめて来つるかひなくおほかたの花の便《たよ》りと言ひやなすべき
[#ここ
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