きていたせいか夫人は苦しがって横になっていた。これまでこうしたおりごとに必ず集まって来て、音楽舞楽の何かの一役を勤める人たちの容貌《ようぼう》や風采《ふうさい》にも、その芸にも逢《あ》うことが今日で終わるのかというようなことばかりが思われる夫人であったから、平生は注意の払われない顔も目にとまって、少しのことにも物哀れな気持ちが誘われて来賓席を夫人は見渡しているのであった。まして四季の遊び事に競争心は必ずあっても、さすがに長くつちかわれた友情というもののあった夫人たちに対しては、だれも永久に生き残る人はないであろうが、まず自分一人がこの中から消えていくのであると思われるのが女王の心に悲しかった。宴が終わってそれぞれの夫人が帰って行く時なども、生死の別れほど別れが惜しまれた。花散里夫人の所へ、
 
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絶えぬべき御法《みのり》ながらぞ頼まるる世々にと結ぶ中の契りを
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 と書いて紫の女王は送った。

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結びおく契りは絶えじおほかたの残り少なき御法なりとも
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 これは返事である。供養に続いて不断の読経
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