たび見舞いの手紙をお送りした。昔大将の母君が亡《な》くなったのも秋のこのごろのことであったと思い出して、大臣は当時の悲しみもまた心の中に湧《わ》き出してくるのであったが、その時に妹の死を惜しんだ人たちも多くすでに故人になっている、先立つということも、後《おく》れるということもたいした差のない時間のことではないかなどと考えて、もののしんみりと感ぜられる夕方に庭をながめていた。息子《むすこ》の蔵人《くろうど》少将を使いにして六条院へ手紙を持たせてあげた。人生の悲しみをいろいろと言って、古い親友をお慰めする長い文章の書かれてある端のほうに、
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古《いにし》への秋さへ今のここちして濡《ぬ》れにし袖《そで》に露ぞ置き添ふ
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という歌もあった。ちょうど院も、過去になったいろいろな場合を思い出しておいでになる時であったから、大臣の言う昔の秋も、早く死別した妻のことも皆一つの恋しさになって流れてくる涙の中で返事をお書きになるのであった。
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露けさは昔今とも思ほえずおほかた秋の世こそつらけれ
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悲しい
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